都庁職病院支部 16時間夜勤疲労度調査

16時間夜勤疲労度調査

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看護対策委員会運動方針

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看護対策委員会運動方針

夜勤問題の解決に向けた大胆・率直な提案
正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇を実現しよう

運動方針

病院支部は衛生局支部等と共同で行った16時間夜勤疲労度調査報告集会を、病院支部の各分会で行います。

病院支部は16時間夜勤疲労度調査の知見を踏まえて、現行の三交替でも二交替でもないシフトを皆さんに提案します。

各分会での報告集会に是非参加してください。


運動方針解説 看護師は週31時間しか働けない

夜勤は有害業務

夜勤は有害業務です。できれば、やらないにこしたことはありません。

しかし看護に夜勤は不可欠です。

ですから、私たちは数時間のインターバルしかない日勤→深夜、準夜→日勤がある現行の三交替や、18時間をこえて働き続けらなければならない二交替を続けてきました。

ですがこれらの勤務ローテーションは、いつまでも働き続けることができるものではないことは、誰よりも第一線で働く皆さんが実感されていると思います。

皆さんの実感を証明しているのが日本看護協会の調査です。

全国で年間10.2万人の看護師が離職しています。その離職理由の上位3位は、「勤務時間が長い・超過勤務が多い」「夜勤の負担が大きい」「責任の重さ・医療事故への不安」です。中堅看護職の離職率は実に12.4%にも上っています。

このまま看護師の労働条件が改善されず、中堅看護師の離職が続けば、看護師不足によって日本の医療は崩壊してしまいます。

ですから看護師の労働条件、とりわけ夜勤の労働条件改善はまったなしなのです。

現行の三交代への解決策が、二交替であるかのように言われています。しかし二交替は解決策になりえないことが、「16時間夜勤疲労度調査」で明らかになっています。

正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇。ローテーションは、日勤→準夜→夜勤休暇→深夜→公休→公休。これが私たちの答です。


1.看護師は週31時間しか働けない

夜勤は有害業務なので、夜勤を行う看護師の健康を守るためには、週労働時間を31時間に制限することが必要です。

常日勤者と同じように週40時間働いては、夜勤を行う看護師の健康を守ることが出来ないのです。

夜勤の悪影響を緩和するための世界基準として、ルーテンフランツの原則があります。この原則に沿ってローテーションを考えてみます。

まず「交替方向は正循環が良い」ですから、夜勤の開始は、日勤→深夜ではなく日勤→準夜となります。

人間はいつもより遅く眠ることは簡単でも、早く眠ることは難しいのです。

ですから、遅く眠るように勤務ローテーションを組む(日勤→準夜)ことを正循環、早く眠るように非生理的なローテーションを組む(日勤→深夜)ことを逆循環と言います。

交替勤務は正循環でなければいけません。

逆循環が健 康に悪影響を与えることは、動物実験等で証明されています。

では準夜の後はどうなるのでしょうか。

「短い勤務間隔時間は避ける」ですから準夜→日勤は問題外です。

では準夜→準夜でしょうか。

これも「夜勤は最小限にとどめるべき」に引っかかります、夜勤の連続は避けなければいけません。

ですから日勤→準夜→休になるしかないのです。

正循環では日勤→深夜はあり得ませんから、深夜の入り方は、どうしても休→深夜となります。

そうなると準夜→休→深夜というローテーションになります。

ローテーションの1サイクルは、日勤→準夜→休→深夜→休となります。


2.夜勤休暇

準夜と深夜に挟まれた休みは、連続24時間確保することができません。

このような実質24時間続かない休日は、労働基準法の休日の資格(法定休日)を満たしません。

しかも深夜入りが常に休→深夜となると、常日勤者よりも過酷な労働を強いられている交替勤務者である看護師の休日の半分が質の悪い休日でしめられるということになります。月4回の深夜勤務をこなすとすれば、年間48回となります。

これをすべて年次有給休暇で対応しようとすれば、すべての年次有給休暇をつぎ込んでも足りなくなります。

したがってルーテンフランツ原則に基づいてローテーションを組み立てたとき準夜と深夜の間に生じる24時間に満たない1日を公休や年休で対応することは現実的ではないということになります。

常日勤者に比べて過酷な交替勤務をこなす看護師には、少なくとも常日勤者と同じ質、本来はより質の高い休日が保証されるべきできな のです。

ですから私たちは、準夜と深夜の間の1日を、公休でも年休でもない、夜勤の有害性から看護師を保護する夜勤休暇とすることを要求します。

そうなると実際のローテーションはどうなるでしょうか、日勤→日勤→準夜→夜勤休暇→深夜→公休→公休となります。

つまり夜勤の悪影響を緩和するためにルーテンフランツ原則に基づいてローテーションを組めば、夜勤を行う看護師は週31時間しか働けないのです。

このように正循環の三交替は、週31時間労働・夜勤休暇とセットで実現されて初めて有効なものとなります。看護師の週31時間労働・夜勤休暇の要求は非現実的でしょうか?現在の日本では、本来週31時間しか働かせてはいけない看護師を40時間以上働かせています。

その結果が、年間10.2万人の離職です。


3.25%の人員増を!

では週31時間労働・夜勤休暇を実現するためには、どの程度の人員増が必要なのでしょうか。単純計算すれば20%の増員が必要となります

夜勤休暇が実現されたとしても、業務が過密で各勤務帯で超過勤務が発生するようでは本来の週31時間労働にはなりません。そこで私たちは20%ではなく、ゆとりを生み出すためにも25%以上の増員を実現するべきだと訴えます。

各都立病院・公社病院で、全国の病院にさきがけ、正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇を導入することを要求します。この導入は以下のようなインパクトをもたらす ことは確実です。

退職者は激減し、求職者は増大する。

なぜなら、好きこのんで二交替を行っている看護師はいないからです。

人件費は増大しますが、そのため、現在全国で展開されている新人確保のための費用、新採用者のためのオリエンテーションに関わる費用などを限りなく圧縮できます。

退職者が減少すれば、看護チームは安定し看護の質の向上が実現され 2

正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇を導入実現のためには運動を大きく広げる必要があります。


4.各病院で16時間夜勤疲労度調査報告集会を成功させよう

運動を広げるためには、まず訴える私たち自身が、正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇の正当性に確信を持つ必要があります。

支部は昨年から今年にかけて、衛生局・養育院支部、都庁一般労組と共同で「16時間夜勤疲労度調査」を行いました。

正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇のスローガンは、この調査に取り組み結果を分析するなかから練り上げられてきたものです。

「16時間夜勤疲労度調査」は、初の大規模で科学的な16時間夜勤の検証でした。

200人の組合員が参加した調査から得られた膨大なデータは、未だ分析の途中です。

しかし私たちは調査に取り組みデータを分析するなかで、辛すぎる現行の三交替に対する答えが二交替ではないことを明らかにしつつあります。

私たちが二交替でも現行の逆循環の三交替でもなく、正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇を要求するに至ったのは、「16時間夜勤疲労度調査」に取り組んだからです。

従ってこの調査の成果を多くの組合員の皆さんと共有することから始めようと思います。

具体的には、病院支部の各病院で「16時間夜勤疲労度調査報告集会」を行います。

報告集会と同時に、調査に参加してくれた組合員に対する疲労カウンセリングも同時に行う予定です。

報告集会には、広く組合員に参加を呼びかけるだけでなく、共に看護師であり私たちの苦悩を共有しているだろう看護部の皆さんにも参加を呼びかけたいと思っています。

この報告集会運動を大きく組織するなかで、正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇に対しての確信を多くの組合員の皆さんと共有していきたいと思います。

そしてこのスローガンを病院支部だけでなく、衛生局支部や養育院支部の仲間にも広げて行かなければいけません。

そして都庁で働く労働者で組織される都庁職のスローガンになるようにしなければなりません。

そして全国の看護師のスローガンにしていかなければなりません。その第一歩を共に踏み出しましょう。


5.学会に世論に訴える

正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇への確信を、組合の枠を超えて広げていかなければ実現は不可能です。

そのためには世論に訴えかけて行かなければなりません。

さまざまな機会を捉えて言論活動を行う必要があります。

とりわけ、様々に組織されている医療関係労働組合、自治体労働者の労働組合の共通のスローガンになるように努力する必要があります。

また看護学会で、私たちのスローガンの有効性を訴えるためにも、11年秋に予定されている日本看護管理学会に日本初の労働組合による演題発表を「合同研究班」として予定しています。

4月に調査結果の第一報を看護実践の科学5月号に掲載しましたが、今後も結果がまとまり次第、順次発表し世論形成のための社会的発信を継続していきます。


6.二交替・三交替職場における仮眠権の確立を

正循環の三交替、週31時間労働・夜勤休暇が実現するまで何もしないでいるわけにはいきません。

過酷な現状を少しでも改善して働き続けることができる職場を実現する必要があります。

現在、二交替で働いている組合員の皆さんには信じられないかもしれませんが、私たちには仮眠の権利が保証されているとは言いがたい状況におかれています。

なぜなら、私たちは拘束時間17時間で、90分の休憩が保証されているだけだからです。

勤務条例では、この90分のなかで、夕食、朝食を含めた休憩を取らなくてはならならず、これでは仮眠どころではありません。私たちは、二交替職場で働く看護師の健康と、患者の安全を守るためにも二交替職場での仮眠の権利を確立することが急務と考えます。

少なくとも16時間夜勤中に4時間の仮眠の権利を確立するべきです。

夜勤中に4時間の仮眠時間と複数勤務を確保するためには、現行の3人夜勤から4人夜勤への増員が不可欠です。

三交替職場でも最低2時間の仮眠の権利が必要です。そのためには同様に4人夜勤が必要です。また仮眠を取るスペース、仮眠専用のリネンなどの整備も不可欠です。


7.おわりに

まずこのパンフレットを読んだ感想を、どうすれば夜勤と長時間労働から身を守るためにはどうしたら良いのか友達と話し合ってみましょう。

そして小さくていいから、つぶやいてみましょう。

「二交替も今の三交替も嫌だ。組合の案がいい」

そして誘い合って、まずは報告集会に参加してください。

看護師の夜勤問題は、看護師だけの問題ではありません。

なぜなら一生病院と無縁でいられる人はいないからです。

ですから、看護師の労働条件改善は、将来患者になるかも、患者の家族になるかもしれない日本に暮す、すべての人の問題なのです。

このパンフレットは病院支部ホームページからダウンロードできます。

看護師以外の友人、家族にも大いに広めてください。

看護対策委員会運動方針11年(pdf)はこちら

2011年5月31日 都庁職病院支部