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笹山弁護士の労働相談

その1

質問

「組合はなんのためにあるのですか?

なんか、団体に加盟するのは怖いんですけど」

line01

 

答え

もっともです。

でも、すごくもったいないと思います。

 分譲マンションに住んでいれば管理組合に入りますし、町内会に入っている場合もあるでしょう。管理組合も町内会も団体です。 社会生活で団体に加入することは普通にあることです。要は自分にとって役に立つか否かで考えていただければよいと思います。

そして、労働組合は、労働者にとってものすごく役に立つ存在です。

これを活用しないのは、「もったいないなぁ」と、強く思います。

 どんなふうに役に立つのか、例を一つ、お話ししましょう。

 都区内に、Sさんという20代の男性が住んでいます。  彼は、今は中小企業の団体の職員をしていますが、以前、あるスパゲッティチェーン店でアルバイトをしていました。

 彼は、店長をしている正社員が、アルバイトに仕事をろくに教えず、気に入らないアルバイトを無能呼ばわりして、人間扱いしないことに強い疑問を覚えていました。

決まった労働時間の中で、突然、「今日はお客が少なくてヒマだから、少し休憩してこい」と店長から言われ、突然休憩扱いとされその分の賃金が支払われないのはおかしいと思っていました。

何時間働いても、残業代が全くでないことにも疑問を感じていました(法律では、1日の実労働時間が8時間を超えた場合は、残業代を支払うことが全ての事業者に強制されています。)。

 Sさんは、まず店長に、次に会社に、自分の疑問をぶつけてみました。店長は鼻で笑っただけでした。会社では、部署をたらい回しにされました。

 どうしてこんなことがまかり通ってしまうのか。

 Sさんは、ある個人加盟ユニオンに相談しました。Sさんは組合に入り、組合から団体交渉を申し入れてもらいました。Sさんからの連絡では、あれだけただたらい回しにした会社が、団体交渉に応じると回答しました。団体交渉出席当日、会社側からは、労務担当役員や社会保険労務士も参加していました。

 Sさんは団体交渉で思いの丈を訴えました。ユニオンの役員も彼の言葉をフォローしてくれました。その結果、就業規則、賃金規程、彼の店舗のシフト表、タイムカードが開示されることになり、それらは数日後に組合に到着しました。

 Sさんは、労働組合が表に立っただけで、話し合いがまともに成立し、望んでいた資料が手に入ったことに驚きました。同時に、Sさんたちがいくら長時間働いても残業代が出てこないのは、「変形労働時間制度」というものが導入されていることが理由であることを知りました。

 しかし、変形労働時間制度で定められている条件は、職場の実態と一致しません。この制度は違法ではないか。Sさんはそのことをユニオンとともに追及しましたが、会社はこの点については譲りませんでした。

 Sさんはユニオンと相談し、私のもとに相談に訪れました。その結果、Sさんは私を代理人として訴訟を起こすことにしました。

 訴訟の結果、会社が導入していた変形労働時間制度は違法であることがはっきりしました。会社は、Sさんに残業代を支払うことになりました。

 Sさんは、訴訟が終了した後も、ユニオンと共に、この会社では、変形労働時間制度を合法的に運用することは難しいではないかということを追及しました。結果、会社はついに変形労働時間制度を継続することを断念。「変形労働時間制度を止めます」とユニオンに通知しました。

 Sさんは、お店を辞めるとき、お店の他のスタッフから、送別会を開いてもらいました。  「ほんの少しだけですが、会社を変えることができました。それも僕の力で。それがうれしいですね。でも、ユニオンの力があればこそです。みんなに感謝です。」

 Sさんが私に言ってくれた言葉です。Sさんは、このお店を辞めても、ユニオンのメンバーにはとどまり、ユニオンの執行委員を務めて、今度は、他の組合員の問題の相談、解決にもあたっています。

 働く者は、憲法28条で、団結権、団体交渉権、団体行動権を保障されています。これが労働組合での活動が保障される原点です。労働組合法は、それを具体化するために労働組合の活動を様々にバックアップしています。

 こういう仕組みであればこそ、労働組合の活動は、ほかの団体に比べても職場に大きな影響力を持つのです。使いようによってですが、一人の労働者が取り組むことをきっかけに、一つの会社から、「変形労働時間制度を一掃させる」、そんな力を持っているのです。

 それもこれも、全ては、私たちの雇用と、働く際の環境や賃金、労働時間といった労働時間を、より働く者にとって快適なものにするためです。

 そして、これは、民間の職場だけのことではありません。私は、ある都庁職の支部からの依頼で、超過勤務手当請求事件を担当したことがあります。裁判での勝利をきっかけに、当該局では、超過勤務手当予算が億単位でつけられるようになった、ということです。

 私は、日本の労働者の最大の不幸は、多くの労働者がこのような労働組合の意義と効能を体験しないでいることだと思っています。労働組合の力をうまく使うことによって、職場を少しずつ変えることができる、自分もその力の末席には加われる、そんな喜びをもっともっと多くの労働者に味わって欲しい。私はそんなことを願って、労働組合との仕事を日々遂行しているのです。

 というわけで、どうかみなさん、労働組合の活動にご参加ください。

 なに、固く考える必要はありません。まずは、組合からの連絡文書に目を通す。組合の主催する集まりに参加し、議論を聞いてみる。その程度のことからでいいのです。

以 上

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