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笹山弁護士の労働相談

その24

質問

Q24 「結婚するのですが、名字が変わるので手続きが面倒くさい!女性ばかりがこんなめにあうのは、おかしいんじゃないでしょうか?」

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答え

結論としては、私はおかしいと考えています。しかし、現在の民法では、法律上結婚しようと考えれば、婚姻する当事者のいずれかが氏を変更しなければなりません。

  • 1、民法750条による改姓の強制
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    わが国の民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定めています。つまり、結婚する際には、夫が妻の氏に改姓するか、妻が夫の氏に改姓するかのいずれかをしなければならないのです。現実には、男性の氏を選び,女性が氏を改める例が圧倒的多数です。

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    このような改姓の強制が、アイデンティティの喪失や、築いてきた社会的地位との関係で不利益の発生、氏の変更手続きの実務手続きの面倒さ・煩雑さをもたらします。

     私自身、2000年に妻と婚姻することになったのですが、妻は、私の姓に改姓することを拒否しました。私自身は、それまで、女性が氏を変えるということについて、それほど疑問を持っていませんでしたので、妻のこの意見には正直驚きました。しかし、次の妻の一言は、なるほどと思わせました。「自分が、自分の姓を捨てて、私の姓に変えられるか。それを考えてみて。」

     私たちは、結局、法律婚をせず、別姓のまま、二人の合意として結婚をするということ(いわゆる事実婚)を選択しました。しかし、この選択は、親族からの反対に遭い、その後の家族間の人間関係にも大きな禍根を残しました。

  • 2、裁判と最高裁判断のおかしさ
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  • この民法750条は憲法違反だという裁判で、2015年12月16日、最高裁判所が判決を下しました。残念ながら最高裁は合憲判決をくだしました。

     最高裁が合憲とした理由は、「夫婦になる際の氏の改姓は家族の呼称として社会に定着している」「改姓による不利益は、婚姻前の姓の「通称」使用が広まることで一定程度、緩和され得る」といったものでした。

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     しかし、女性の社会進出や、仕事と家庭の両立など、婚姻前から継続する社会生活を送る女性が増加したのにともない、「婚姻前の姓」を使用する合理性と必要性が増しており、夫婦別姓を認めないことは、多くの場合、妻となった者のみが、個人の尊厳の基礎である「個人識別機能」を損ねられ、「自己喪失感」といった負担を負うことになる。

    氏が同じでなければ家族の一体感が生まれないということはなく、氏が異なっても仲よくしている家族もいれば、氏が同じでも仲の悪い家族もおり、最高裁の理由は理由とならない。

    通称使用についても、公的な文書には使用できない場合があり、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を引き起こすから、やはり最高裁の理由は理由にならない。

    そもそも、日本国憲法24条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると定めており、合意だけによって成立する婚姻の自由を定めているから、「氏の変更の強制」は憲法にない要素を付け加えるもので自由を否定するものである。

     以上の理由を考えれば、最高裁判決の誤りは明瞭です。

     最高裁判決直後の12月18日、日本弁護士連合会も、最高裁判決を批判し、民法750条を改めるよう国に求める声明を発表しました。

  • 3、選択的夫婦別姓制度の構築を
  •  もちろん、積極的に夫の姓を名乗りたいという妻もいるでしょう。ですから、求めるべきことは、「選択的夫婦別姓制度」です。夫婦別姓を選択したい場合は、夫婦が自分の氏のままいられる制度を構築することです。

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                              以 上

この判決にめげず、選択的夫婦別姓制度を勝ち取ろう。これは、私にとっても私自身の問題でもあります。

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